CD/DVDのススメ
DVD±R
DVD±Rとは
書き込み型DVDには数多くの種類がありますが、ここではDVD−RとDVD+Rについて説明します。
DVD−RとDVD+Rは一度だけ記録できるDVDで、記録後は多くのDVDプレーヤーで再生できます。
「R」は「Recordable(記録可能)」の頭文字です。
大抵のDVD±Rは記録面が綺麗な青色をしており、
ディスク内側のデータが記録された部分は白っぽく変色します。
2種類の規格 DVD−RとDVD+R
DVD−RはDVD−ROMの規格を制定している企業団体DVDフォーラムが定めた純正のDVD規格です。
DVDフォーラムは東芝、松下、日立など国内家電メーカーを中心に構成されています。
DVD+Rは別の企業団体DVD+RWアライアンスが定めたDVDの互換規格です。
DVD+RWアライアンスはSONY、フィリップス、DELLなど海外企業やパソコンメーカーを中心に構成されています。
DVD−RとDVD+Rは互いに互換性がないのでDVDレコーダーやメディアを購入する前にどちらに対応しているか調べておくと良いでしょう。
どちらに対応しているかはロゴで判断できます。
左がDVD−R、右がDVD+Rのロゴです。
パソコン用のDVDドライブでは両方に対応している製品も多いのですが、ビデオ用のDVDレコーダーではDVD+Rに対応しているものは少ないようです。
DVD−Rの方がDVD+Rよりも先に製品化され、いち早く機器やメディアなどの製品が出揃ったためかメディアの種類が豊富で、
価格や品質など好きなものを選ぶことができます。
一方DVD+RはロスレスリンキングやROM化機能、
ファイナライズが不要であるなどDVD−ROMとの互換性や使い勝手の良さが売りです。
3種類のDVD−R
DVD−Rにはさらに細かく3種類の規格があります。
一般向けの規格である「DVD−R for General Ver2.0」、
業務用の「DVD−R for Authoring Ver2.0」、
初期の規格「DVD−R Ver1.0」です。
DVD−R for General Ver2.0は家庭用DVDレコーダーで使用されている規格です。
単にDVD−Rという場合は大抵このGeneralの事を指します。
DVD−R for Authoring Ver2.0はDVD−ROMの元ディスクを作成する用途で使われます。
大変品質が良くほぼ全てのDVDプレーヤーで再生できると言われていますが、レコーダー、ディスク共に高価な製品です。
使用目的上コピープロテクトが効かないため、不正コピに使われないようにGeneral規格との互換性を無くして家庭用DVDレコーダーでは記録できないようになっています。
DVD−R Ver1.0は既に過去の規格で、容量が3.95GBしかありませんでした。
今では殆ど見かけません。
ディスクの構造
DVD±Rは樹脂層と反射層の間に有機色素でできた半透明の薄い記録層があります。
この有機色素を高温のレーザーで化学変化させて反射率の低いピットを形成します。
CD−Rでは主にシアニン系、フタロシアニン系、アゾ系の3種類の有機色素が使われていましたが、
DVD±Rでは殆どの製品でアゾ系色素が主成分に使われています。
フタロシアニンはDVDの小さなピットを作るのが苦手なので現在DVD±Rメディアには使われていないようです。
反射層にはデータを書き込むための案内溝(グルーブ)が彫ってあり、レコーダーはこのグルーブに沿ってピットを記録します。
グルーブの蛇行(ウォブリング)は位置情報となっており、ディスク上での走行距離を測る手助けをしています。
樹脂層 | ポリカーボネート製の透明な層 |
記録層 | 有機色素の記録層。熱による化学変化でピットを形成する |
反射層 | レーザー光を反射する金や銀など金属製の層 |
保護層 | 傷、歪みなどからデータを護るUV硬化樹脂の層 |
接着面 | 表裏2枚の基盤を接着する |
プリピットの−R 、 高周波ウォブルの+R
DVD−RとDVD+Rの大きな違いはグルーブのウォブリングです。
DVD−Rのウォブルは周期的に蛇行していて目盛りの働きをします。
ディスク内での移動距離を測るには波の数を数えればよい訳です。
目盛りだけでは相対的な位置しか分からないので、
グルーブ間のディスク上の決まった位置にプリピットが配置されており、
書き込み時はこれを見てディスク内での位置を特定します。
DVD+Rのウォブルはディスク内での位置情報をFM変調した周期で蛇行しています。
ウォブリングだけでディスク内の位置が特定できるのでDVD+Rにはプリピットがありません。
また、非常に細かく蛇行(高周波ウォブル)しているので
追記の時に正確な頭出しができ、ロスレスリンキングが可能となっています。
有機色素とポリカーボネートの変化
熱を加えられた有機色素は分解され、逆にポリカーボネート基盤は膨張します。
記録後のピットの凹凸はプレスされたDVD−ROMとちょうど逆になりますが、
光学的に位相が反転されてピットの反射率が下がる効果に変わりはありません。
この変化は一度起こると二度と元に戻すことができないため、DVD±Rは書き換えができないのです。
ライトストラテジ
DVD±Rディスクに使われている記録層の熱特性は様々です。
一言でアゾ系、シアニン系といっても膨大な数の種類があり、
さらに各色素の混合比や混入する耐光剤の種類によっても特性が変わってくるのです。
熱に敏感なディスクに対して強いレーザーで記録すると焼けすぎてピットが大きくなったり、
逆に熱に反応しにくいディスクだと殆どピットが形成されない事も起こり得ます。
そこで各ディスクに対して最適なレーザーパワーで記録が行えるように、
レコーダーがディスクの素性を読み取ってレーザーパワーを調節する機構があります。
これをライトストラテジと呼びます。
ディスクの最内周に予め製造メーカーや色素の情報を記録した領域があり、
ここを読み取ってレーザーパワーを決定します。
しかし、レコーダー側も世の中に出回っている全てのディスクの情報を持っている訳ではなく、
マイナーなメーカーの物や最近発売されたばかりのディスクでライトストラテジが無い場合は書き込みに失敗しやすくなります。
このような場合、レコーダーのファームウェアをアップデートする事で解決する場合もありますが、
必ず解決するという訳ではありません。
ディスク、レコーダー共に国内製造のもの同士ならば大抵の場合ライトストラテジを持っているようです。
DVD−RとDVD+Rの違い
ロスレスリンキング
一度記録したDVD±Rの未記録領域に追記する際、
DVD−Rでは2K〜32Kバイトの長い繋ぎ目ができてしまいます。
DVDプレーヤーではこの繋ぎ目をうまく読み飛ばす事ができず、再生に失敗したりノイズになったりします。
一方、DVD+Rは高周波ウォブルによる正確な頭出しができるため、追記する際の継ぎ目を非常に小さく抑えることが出来ます。
この長さは0ではありませんがDVDの強力なエラー訂正能力で完全にカバーすることができるため、
論理的にはきれいに繋がっているのと変わらない状態での追記が可能となっています。
ROM化
ディスクの最内周には制御情報が記録されており、
DVDプレーヤーはこの領域を読み込んでDVD−ROMなのかDVD±Rなのかを判断しています。
DVD+Rは遅れて登場した規格なので古いプレーヤーはDVD+Rを知りません。
それでDVD+Rを「未知のディスク」として再生しない場合が多くあるのです。
そこでDVD+Rはこの制御情報をオリジナル原本と再生用の二箇所持つことにしています。
再生用の領域は初めは何も記録されておらず、
ディスク書込み時にオリジナル原本からコピーする、
もしくは「DVD−ROM」と偽って記録する事ができます。
これで古いプレーヤーをDVD−ROMと騙して強制的に再生させることができます。
DVD−Rの制御領域は書換えられないのでROM化はできません。
(DVD−Rを弾くプレーヤーは無いと思うのでそもそもROM化する必要が無いとは思いますが。)
1.1Gバイト書き込み
DVDフォーラムが定めたDVD規格では、どんなディスクでも最低約1.1Gバイトのデータを記録する決まりになっていて、
書き込むデータが少ない場合はダミーのデータで埋める事になっています。
このため、DVD−Rは少量の書込みでも大量のダミーデータを記録するため時間がかかります。
一方DVD+RはDVDフォーラムの決まりに従う必要がないため、
必要なデータだけを書込んで素早く記録を終わらせる事が可能です。
1.1Gバイト未満のディスクでも多くのプレーヤーで問題なく再生できますが、
DVDフォーラムの決まりを厳守しているプレーヤーでは読み出せない可能性があるので
後からダミーデータを追記して1.1Gバイトにすることも可能です。
再生互換性
DVD−RとDVD+Rのどちらの方が再生互換性が高いかは意見が分かれるところで、
再生できるかどうかは実際にプレーヤーにセットしてみないと分からないというのが実情です。
DVD−R for Authoringの互換性はダントツですが、
DVD−R for GeneralはわざとAuthoringよりプリピットを減らしてあるのでピットの位置が少々ずれやすく、
DVD−ROMとの互換性に多少の不安が残ります。
その点DVD+Rは高周波ウォブルのおかげでピットの位置ズレは殆どなく、
DVD−ROMとほとんど変わらないディスクを作る事が可能です。
しかし一方では、品質の悪いレコーダーなどを使うと高周波ウォブルが災いして横方向のズレに弱くなる傾向があるそうです。
また、国内家電メーカーの多くがDVDフォーラムのメンバーなのでDVD+RよりもDVD−Rの読み取り品質を優先する傾向があるようです。
このため一概にDVD+Rの方が互換性が高いとはいえない状況です。
プレーヤーでの再生互換を求めるなら、DVD+RかDVD−Rかという議論よりもできるだけ品質の良いディスクとレコーダーで精度良く記録することが一番のようです。
データが消える!?
「デジタルは劣化しない」と良く言われますが、それは情報理論の中の話。
現実にはデータの記録された物質が刻一刻と劣化します。
永久保存したい大事なデータをDVD±Rに保存している人も多いと思いますが、
ある日突然「DVD±Rが読めなくなった!」という経験をした事はないでしょうか・・・?
外光による感光
DVD±Rの記録層は光に反応するので、記録後でも強い光が当たり続ければデータが破壊されてしまう場合があります。
特に太陽や蛍光灯の光に弱く、光に敏感なシアニンが記録層に多く使われていると1週間程でデータが読めなくなる事もあるようです。
大事なデータは品質の良いのアゾ系のディスクに焼いて、不透明なケースで光の届かない場所に保管しましょう。
再生光劣化
暗所にしまっていても、DVD再生する時には必ずレーザーの光をあてます。
読取り用レーザーは書込み用レーザーに比べると低出力ですが、高速読み出しの時は少し強めのレーザーが使われます。
一方、書込みレーザーも等速書込みでは焼きすぎないように弱めのレーザーを使うので、DVD±Rは弱い書込みレーザーにも反応する色素が混ぜられています。
従って頻繁に高速読み込みを行うとピットの形が崩れだし、最後には読めなくなってしまう可能性があります。
このような場合は、保存用と再生用の2枚のディスクを用意しておくと良いでしょう。
ディスクの反り
ディスクは非常に反りに弱いものです。
レーザー光が偏って屈折するためピットを正しく捉えることができず、読み取りエラーやノイズの原因になります。
また、反ったディスクはプレーヤーの中で水平に回転しないので、回転軸にも負担がかかり寿命を縮めます。
プラケースから取り出す時にディスクの両端を持って強引に引っ張っていると、少しづつ、しかし確実にディスクは反ります。
ディスクとケースが接する薄型ケースも反りには良くありません。
サイズも大き目で真中の爪を押すとディスクを取り出せるタイプのケースがオススメです。